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どうなるデジタル課税(その3)

経済のデジタル化から生じる税務問題に対処する2本柱に関する声明

Statement on a Two-Pillar Solution to Address the Tax Challenges Arising From the Digitalization of the Economy

(仮訳)

2021年7月1日

初めに

OECD/G20のBEPS包括的枠組みは経済のデジタル化から生じる税務問題に対処する2本柱の解決に合意しており、それぞれの柱の主たる内容は以下のとおりである。詳細な導入プランは残りの課題と伴に2021年10月の最終化を予定している。

柱1

範囲

対象となる企業はグローバル収入が200億€で利益率(税前利益)が10%超とするが、本合意後7年以内に、関連する検証の後、金額Aの税務安定性を含む導入の成功を前提にして、グローバル収入は100億€に減額する。検証手続きは1年以内に完了する予定である。

ネクサス

市場の司法管轄に金額Aの配分を認める新たな特別目的ネクサスルールを導入し、当該市場の司法管轄においてMNEが1百万€の収入を稼得している場合に適用する。GDPが400億€と小規模な司法管轄については、ネクサスは25万€とする。

特別目的ネクサスルールは司法管轄が金額Aの配分に適合しているかを決定する目的のみにおいて適用する。

コンプライアンスコスト(少額売上高の追跡等を含む)は最低水準にとどめる。

配分額

対象となるMNEについては、収入に対する利益率の10%を超える残余利益の20-30%の範囲で、収入を基準とした配賦基準を使用してネクサスを持つ市場司法管轄に配分される。

収入源泉

収入は資産又は役務が使用または消費される最終の市場司法管轄に源泉があるものとする。この原則を促進するために、取引の分類に応じた詳細な源泉規定を策定する。源泉規定の適用について、MNEはMNEの固有の事実と状況に応じた信頼しうる方法を使用しなければならない。

課税標準の決定

対象となるMNEの利益または損失に係る測定は、財務会計基準を用い、少数の調整を行い決定される。

セグメント

財務会計上開示されるセグメントに基づき、例外的な状況においてのみ、セグメントに範囲規定が適用される。

マーケティング及び販売利益のセーフハーバー

市場の司法管轄で既に対象となるMNEの残余利益が既に課税されている場合には、マーケティング及び販売利益のセーフハーバーが金額Aによる当該市場の司法管轄への残余利益の配分に上限を設ける。セーフハーバーの設計に関する更なる作業は、包括的範囲の検討も含み行われる予定である。

二重課税の排除

市場の司法管轄への配分利益に係る二重課税は非課税又は税額控除のいずれかにより救済される。

納税債務を負担する企業は残余利益を稼得する企業から決定される。

税務の安定性

対象となるMNEは、金額Aに係る二重課税の回避及び金額Aに関連する全ての課題(例えば、移転価格及び事業利益の係争)を含む、強制かつ拘束力のある係争防止と解決に関するメカニズムの恩典を利用できる。

金額B

マーケティング及び販売活動に関する国別最低利益(in-country baseline profit)に係る独立企業原則の適用は、対応能力の乏しい国のニーズに特に配慮し、簡便かつ簡素なものとする。この作業は、2022年末までに完了する予定である。

管理

税務コンプライアンス(申告書提出義務も含み)は簡素化され、MNEの単一の企業により、その手続の管理を可能とする。

一方的措置

このパッケージは、すべての企業に対する新たな国際税務規定とすべてのデジタルサービス課税の排除及びその他の関連する類似措置の適切な調整を提供するものである。

導入

金額Aの導入による多国間協定の策定は2022年に署名開始し、金額Aの2023年の導入を目指す。

柱2

全体設計

柱2は以下を構成する:

  • 二つの国内規定の連動(GloBE規定と伴に)(i)構成企業の低課税所得に対する親会社での追加課税(top-up tax)からなる所得合算規定(IIR)、(ii)構成企業がIIRの課税対象とならない場合に、低課税所得に関して損金算入否認又はそれと同等の調整を行う、低課税所得損金不算入規定(UTPR)、及び
  • 所得源泉の司法管轄において最低税率に満たない税負担の一定の関連者支払に関して限定した源泉地国課税を認める条約を使用した規定(条約恩典制限規定STTR)。STTRはGloBE規定の対象租税に係る税額控除対象となる。

規定の位置づけ

GloBE規定は共通アプローチの位置づけとなる。

これはIF(包括的枠組み)のメンバーは:

  • GloBE規定の採用を要求されないが、その選択をする場合には、IFにより合意された模範規定とガイダンスを含む、柱2において提供される結果と整合する方法を用いた既定の導入と管理を行う。
  • 規定の優先順位及びいかなる合意されたセーフハーバーの適用を含む、他のIFメンバーにより適用されるGloBE規定の適用を受け入れる。

範囲

GloBE規定はBEPS13(CbCR)で決定された7億5千万€の閾値に適合するMNEに適用する。MNEの本社所在地における国は、当該閾値に適合しないMNEに対してもIIRを自由に適用する事ができる。

政府系企業、国際機関、非営利団体、年金基金あるいは投資信託がMNEグループの究極的親会社(UPE)となる場合にはあるいは、そのような企業、団体、基金による持株会社はGloBE規定の対象とならない。

規定の設計

IIR は、80%未満の持株割合については、分割持分規定(split-ownership rule)を適用した、トップダウンの追加課税の配分を行う。

UTPRは、UPEの司法管轄所在の構成企業を含む低課税構成企業に係る追加課税を合意される方法に基づき配分する。

ETRの計算

GloBE規定は、司法管轄毎かつ対象租税の共通定義と財務会計基準(柱2の税務方針の目的と期間差異に対応するメカニズムに整合する調整を伴う)を用いて決定された課税標準により計算される実効税率のテストを用いて、追加課税を行う運用となる。

分配税システムに関しては、3年から4年以内に分配され、かつ最低水準を超えて課税される場合には追加課税の納税債務は生じない。

最低税率

IIR及びUTPRの目的で使用される最低税率は15%となる。

カーブアウト

GloBE規定は保有する有形資産及び給与総額の最低5%の所得金額を除外する計算上の実質除外規定を盛り込む。

GloBE規定はまたデミニミス(少額不追及)除外を盛り込む。

その他の除外

GloBE規定はまたOECDモデル条約における国際海運所得の定義における当該所得を除外する。

簡便化

GloBE規定の管理が可能な限りその目的を達成しかつ、柱2の目的と不整合な、複雑性と管理コストを避けるために、セーフハーバーとその他のメカニズムを導入の枠組みでは含むこととする。

GITIとの共存

柱2は司法管轄毎の最低税率を適用する事で合意されており、その関連においてGloBE規定と共存する米国GILTI制度における適用条件に係る検討が公平な適用(level playing field)を確保するために必要となる。

STTR

IFメンバーはSTTRは発展途上国が柱2の合意事項を達成する必須事項と認識している。利子、ロイヤルティ及びその他の定義される支払につきSTTRの最低税率に満たない名目的な法人所得税率を適用するIFメンバーは、発展途上のIFメンバーと二国間条約においてSTTRを導入する。

課税権は、最低税率と当該支払に適用される税率との差分に限定される。

STTRの最低税率は7.5%から9%となる。

導入

IFメンバーは導入プランに合意し公表する予定である。ここでは、柱2が2022年中に立法化され、2023年中に適用されることを目指している。

導入プランは以下を含む:

  • GloBE規定を導入するIFメンバーのその経過とともに調整するGloBEモデル規定、及びその目的における多国間協定の開発の可能性
  • STTRの採用を促進する多国間協定とSTTRモデル条項
  • UTPRの繰延導入の可能性も含む経過措置規定

次のステップ

上記の合意到達は、実態を伴う現実の経済活動を営むMNEに限定的な影響になるよう配慮した、強固なグローバルミニマムタックスに対するIFメンバーの熱意を示すものである。グローバル最低実効税率とカーブアウトの間に直接的な関連を認識し、合意した枠組みの10月までにこれらの設計されている内容について最終決定ができるよう議論を継続する。国際活動が初期段階のMNEのグローバルミニマムタックスの適用除外についても探求予定である。