ESN tax consulting 国際最低課税制度の実務対応のポイント -みなし繰延税金資産の特例計算 | ESN tax consulting | 税理士、シニアコンサルタントによる高品質の税務コンサルティングファーム | 東京都千代田区

Home >  新着情報一覧 >  国際最低課税制度  >  国際最低課税制度の実務対応のポイント -みなし繰延税金資産の特例計算

NEWS 新着情報

国際最低課税制度の実務対応のポイント -みなし繰延税金資産の特例計算

国際最低課税制度による実際の税負担増加につながる日本の多国籍企業は限定的になる一方で、本制度がOECDのBEPSプロジェクトに参加する国と地域にモデルルールに準拠して作成されており、多国籍企業の税務情報の透明化を本制度においても図っていくことに伴う「特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供」が、参加する全ての国と知己において必要とされる情報となることから、本制度への対応が実務対応の中心になってくることが予想される。提出義務のある企業は、基本的には国別報告書と同様の750百万ユーロの収入がある連結財務諸表において計上されている企業である。国別最低課税制度のボーダーラインとなる基準税率は15%であり、国別の実効税率がこれを毎期継続して超えている場合には本制度の納税額の発生はないことになる。この実効税率は国別の調整後対象租税の額が国別グループ純所得金額に占める割合で計算されるが、連結税務諸表に基づき計算される金額を基礎とするため、党法人税等の額に税効果会計適用後の法人税等調整額額を加えた額が調整対象租税の額の基礎となる。しかしながら、この税効果会計適用後の租税の額の算定が、個別財務諸表ベースでは監査スコープ対象外の場合、グループ会社の個社別の帳簿には税効果の適用額が計上されないケースもある他、税効果会計の分類により計上範囲が個社別では異なるケースもある。法定実効税率が基準税率の15%を超えてる国でも、ある国に複数のグループ会社があり、例えばそのうちの1社が損失を計上した場合に、その損失について税効果会計の適用により、法人税等調整額を収益計上した場合には、国別の実効税率が15%を下まわるケースが生じる可能性もあり、結果として国際最低課税額が発生する可能性が生じてしまうことになる。更に、国際最低課税制度における税効果会計適用による法人税等調整額は、基準税率の15%で再計算されることが求められるため、この実務対応は人的対応では限界があり、多額の初期費用を覚悟の上、対応するシステム導入を検討せざるを得ない事態になることが予想される。

しかしながら、本制度の主たる趣旨は、活動実態を伴わない所得については、どの国でも最低15%の税負担を求めることで過度な節税の防止をすることにある事からすれば、税効果会計の適用により本来の趣旨から対象となるならない国が対象となる不可解な結果を回避することも必要となる。そこで、本制度では国別に本制度上の税効果会計の適用に係る法人税等調整額を計上せず、その代わりに過去の年度において生じた国別純損失金額に15%を乗じて計算した額をみなし繰延税金資産として取り扱い、その後の事業年度で使用された額を対象租税額に含める特例を設けている。この特例は、 特定多国籍企業グループ等報告事項等にその適用を受ける旨の記載が在る場合に適用でできる制度となっている。

現在は多くの日系多国籍企業は、国際最低課税制度の影響額にかかるインパクトアセスメントに取り掛かっているが、その際に特定多国籍企業グループ等報告事項等にかかる記載要素の把握と、上記の特例の選択の検討も同時並行的に行うことが望ましい。

国際最低課税制度における税効果会計の適用は、加速度償却等の適用により、会計上の利益より課税所得が小さくなる取引を行った企業が繰延税金負債に係る法人税等調整額を認識することにより、基準税率を下まわることが無いように配慮したものと考えられるため、インパクトアセスメント時には繰延税金負債の計上状況などは要確認となる。